超音波のパイオニア 日本アレックス

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技術情報

超音波洗浄機とは?

産業洗浄について

汚れたものを洗う時には、ブラシやスポンジなどだけでは十分ではない事が多く、洗剤などを使って洗う事が多いと思います。産業洗浄においてもこの考え方は同様で、ブラシ・超音波・バブリングや高圧シャワーといった物理的な力に加えて、界面活性剤や炭化水素、アルコールなどの化学的力と合わせて洗浄をする事が必要です。

洗浄を行う時には、まずは落としたい汚れの対象がどのような汚れか?を明確にする必要があります。その汚れの対象により、適切な物理力と化学力を組み合わせを見いだす事が重要です。例えば切削加工において水溶性切削油が付着している対象物に対して一般的な炭化水素等の石油系溶剤を使用してもワークに付いた水溶性切削油は主成分が水ベースなのに対し炭化水素は石油系溶剤なので洗浄液と汚れが馴染まず汚れの除去が出来ない。と言った事があります。ただ近年、化学力である洗浄液についても機能向上しており、今までの常識では向いていなかった汚れに対しての除去が可能になっている事もありますので、ご使用の用途や状況に合わせて、新しい洗浄技術を含めた洗浄方法を見いだす事が重要です。その他にも、洗浄液の温度や液の清浄度、超音波を使う場合には溶存気泡量、バスケットやワークの設置環境や一度に洗う量なども重要になります。

超音波洗浄機(超音波洗浄器)とは?

超音波洗浄とは、超音波を水や洗浄液などの液中に伝搬させ非洗浄物(ワーク)を洗浄する技術です。産業洗浄において超音波の役割は洗浄、剥離、分散、脱気等様々な分野で使用されています。
洗浄装置の基本形は、洗浄、すすぎ(リンス)、乾燥の3工程で構成されますが、この洗浄及びリンス工程で超音波が使用されます。超音波洗浄機(超音波洗浄装置)にはワークやバスケットを手作業で洗浄槽の内部へ出し入れする手動洗浄装置と、昇降・揺動(洗浄液の中で上下に揺らす機能)のみを行い洗浄完了後はタンク内の洗浄液から上昇して軽く液切りした状態でワークを液外から取り出せるような半自動洗浄装置、コンベア部などにセットすれば随時全行程を行い、乾燥した状態でワークを受け取ることが出来る自動搬送機付き装置があります。

超音波洗浄機の主な構成物は、高周波電力を振動子に供給する超音波発振器と電気エネルギーを振動エネルギー(実際の振動)に変換する超音波振動子により構成されます。

当社の超音波振動子は全て内部にボルト締めランジュバン型振動素子と呼ばれる耐久性に優れた振動素子を使用しています。ボルト締めランジュバン型振動素子の構造は、電極間に圧電セラミックスを挟んで金属で締め上げた構造体で、この電極部に交流電流をかけると、圧電セラミックスが伸び縮みを繰り返して振動することにより超音波を発生させます。ボルト締めランジュバン型振動素子は大きな振動や連続した振動に対しても高い耐久性を持ち、大きな振動を生み出す事が出来て(高振幅)、安定性も高い為、現在では広く採用されております。

超音波洗浄の原理

超音波洗浄は物理的な力による洗浄で、一般的にはキャビテーション、直進流、加速度といった要因が被洗浄物に作用して高いレベルで洗浄が可能です。その中でも20kHz~100kHzの低周波領域の超音波ではキャビテーションによる洗浄効果が最も大きいとされています。それでは超音波洗浄におけるキャビテーションとは、どのように生じているのでしょうか?  

液中には多くの気体分子が存在し超音波は縦波(疎密波)であるため洗浄槽の下部から洗浄液面側に超音波を照射する(振動を発生させる)と振動が伝わり液の表面で反射し下部に戻ります。この疎密波により気体分子に正圧・負圧が交互にかかります。

キャビテーション発生周期

1.気体分子は負圧がかかることにより液中で引き裂かれ、ほとんど真空の空洞(キャビティー)が発生します。この現象をキャビテーションと呼びます。

2.発生した空洞に正圧がかかるとキャビテーションにより生じた空洞が収縮されます。

3.再び負圧がかかると空洞は膨張します。

4.空洞は収縮と膨張を繰り返すことにより、次第に大きく成長して非常に高い圧力をもち、限界に達するとはじけて消滅します。この瞬間に液中の分子がぶつかりあって大きな衝撃力が発生し、衝撃波が生まれます。

超音波洗浄機はこのキャビテーションによる物理的な衝撃力を利用して非洗浄物に付着している汚れを剥離・分散・することで洗浄を行います。周波数の違いにより、キャビテーションの大きさや強さが違います。また、液深や液の種類、液中の気体の量によっても発生の仕方に違いがあります。

定在波について

超音波を照射すると周波数に応じた定在波が液中に生じます。定在波は音圧の腹の部分で最も圧が高くキャビテーションが発生しやすくなります。周波数が高い程、波長が短いため洗浄ムラが少なくなります。低周波での超音波洗浄では周波数を上下に変調するスイープ発振やワークの揺動を行うことで洗浄ムラの対策を行います。また、周波数の異なる振動子を組み合わせることもあります。

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脱気の効果について

超音波により発生するキャビテーションには液体中の溶存気体が一定量必要ですが、溶存気体が多いとキャビテーションの発生効率を落とす要因となります。液中溶存気泡が多いと、超音波は減衰・散乱を引き起こし、超音波の伝搬を妨げて洗浄効果を弱めます。

従って適度な脱気を行う事でキャビテーション発生時の気泡が抑制され超音波洗浄の効果をより効率良くさせることができます。脱気を行う事により超音波の減衰が抑えられ物理力が向上したり、気泡量が減る事でワークへの気泡付着を防ぎ濡れ性も向上すると言う相乗効果があります。超音波をかけ続けて行くことで、脱気はある程度進みますが、脱気装置を使用する事で積極的な液中脱気を促す事が可能です。

超音波洗浄機導入のメリット

  • 狭い隙間・溝などの内部洗浄が可能である。
  • 一度に複数個の洗浄が同時にできる。
  • 比較的短い時間で洗浄やすすぎ(リンス)が可能である。
  • 非洗浄物に対して非接触なので安定した洗浄性が得られる。
  • 洗浄剤と組み合わせることで様々な汚れを除去できる。
  • 脱気すると洗浄効果が大きくなる。
  • 周波数の選択により様々な種類の汚れの除去が可能になる。

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