超音波のパイオニア 日本アレックス

イメージキャラクター NEO君

技術情報

樹脂ステーキング(カシメ)

はじめに

樹脂のステーキング(カシメ)にはいくつかのアプローチがあります。

熱を樹脂突起部に押し当て伝達熱によりハンダごてのような要領で、直接熱を樹脂の突起部に押し当て、樹脂部を溶融した後に冷却を行い固定化させる熱カシメ。超音波振動による摩擦熱を使い、樹脂を加熱固定する超音波カシメ。 放射熱を利用する方法として、赤外線を樹脂突起物に当てて樹脂部を溶融した後にあらかじめ冷やしたパンチを使い、樹脂を固定する赤外線カシメなどの方法があります。このページでは主に超音波カシメの方法についての解説を行います。

赤外線カシメの技術資料はこちらへ

1.原理

超音波ステーキング(カシメ)は、金属と樹脂、または溶着性のない異材質の樹脂同士を、図1 のように樹脂側へ設計したボスの頭部を超音波振動によってホーン先端形状へ合わせて溶融させ、その後再凝固させて金属または樹脂を固定する方法です。
下の図1 では、ホーン先端の中央部に超音波エネルギーを集中させ、ボスの中心部から樹脂全体を溶融し、ホーンと同じような中心がくぼんだドーム形状に固めて金属を固定するタイプです。

2.利点

  1. カシメ時間が短い(通常は1.0 秒以下)
  2. 強度が強い
  3. 複数のカシメを同時に行うことができる
  4. 外観がきれい(糸引き状態にならない)
  5. 設計が容易
  6. 再現性が高く、制御しやすい
  7. 環境衛生的に優れている(溶融時に悪臭がしない)
  8. ネジやボルトなどの部品を使用しない

3.設計

下の図2 は代表的な超音波ステーキングの設計寸法を表しています。
樹脂のボス径“D”に対し、金属をはめ込んだ後のボス突出部の高さは約0.8D ~ 1.2D 程度とし、通常は1.0D 程度にすると良好な結果を得ることができます。 ボスの高さが高すぎる場合、超音波振動と加圧力によってボスが倒れたり座屈することがあります。
カシメ終わった仕上がり形状は、ボスの高さが0.3D ~ 0.6D 程度、外形は1.5D ~ 2.0D 程度になるようにホーンの先端形状を設計します。
ボスの外形と金属の穴径とのクリアランスは、出来る限り小さくした方がカシメの状態が安定し、カシメ強度も得やすくなります。

ステーキング中にボスの根元が超音波振動によって溶けたり座屈する場合は、根元部にR やテーパーを設け、コーナー部における応力集中を避ける必要があります。
ステーキングするボスが1 箇所の場合、超音波振動によってワークが回転したり、位置ズレが発生しやすい為、予め位置決め用のガイドを設けるか、2 ヶ所以上の複数ポイントでステーキングをするのが望ましいです。

4.ステーキング形状の応用例

下の図3 ~図6 は超音波ステーキングの応用例です。

図3:フラットタイプと図4:ナールドタイプのタイプは、ボスの位置決めがしにくいワークの場合や、ボスの径が比較的小さい場合に使用されます。 図5:ドームタイプは、樹脂の材質が硬くもろい場合に、超音波振動により飛散させずカシメを行う際に使用されます。

5.注意点

  1. ドームタイプのカシメ用ホーンは、最終的なドームの深さを実際のサンプルでステーキングをしながら調節すると効率が良い。
  2. ホーンの加圧力は、ボスが変形(倒れや座屈)しない範囲で、高加圧の設定が望ましい。
  3. ホーン先端振幅は、低めにした方が望ましい。
  4. ボスの倒れや根元の溶け出しを防ぐ為、ホーン下降速度は遅めに設定する。
  5. ボスの真下は必ず治具で受けるようにする。
  6. 冷却時間は少し長めに設定し、樹脂を確実に硬化させるようにする。
  7. 精密な部品をカシメる場合は、超音波発振を寸法制御に設定して行うと安定する。