超音波のパイオニア 日本アレックス
樹脂と異種材料を接合する技術として、赤外線カシメを紹介します。
樹脂と異種材料(特に樹脂と容易に溶融しない材料)の接合方法の一つとして熱可塑性樹脂の一部を熱により変形させ、基板・ガラス・金属・樹脂等と固定させる樹脂カシメがあります。
樹脂カシメの工法は、直接的な接触熱で加熱したり、摩擦熱により加熱する方法が一般的です。赤外線カシメ技術とは、赤外線エネルギーを集光させて非接触で樹脂ボスのカシメを行う技術です。
赤外線を発生する熱源によって樹脂を加熱、溶融させるものではなく、赤外線エネルギーを集光させることによって溶融する樹脂部分のみを均一・効率的に加熱するのが特徴です。
従来工法では問題となっていた、熱や振動による製品のダメージの解消、ランニングコストの削減、仕上がり強度とカシメの安定性の改善を実現させる事が可能です。
赤外線カシメ装置は、今後さらに多種多様な産業用樹脂カシメ製品のニーズに応え、様々な分野に普及していくことが期待できます。
ボス箇所のみが局部的に加熱されるので、製品に与える熱のダメージがほとんどありません。また、超音波カシメのように振動も無いので、実装基板等の衝撃に弱い他の部品の損傷や、意匠面側への傷、ダメージの心配がいりません。
樹脂に含有するガラス・フィラー等の含有率が高いものでも対応が可能です。
赤外線カシメは樹脂のボスを加熱して軟化、リベット形状への成形を行う為、製品の固定に他の部品や接着剤等を必要としません。赤外線カシメプローブ1本あたりの消費電力は赤外線照射中の100Wのみなので、他工法と比較して、消費電力を抑えることができます。
赤外線カシメ装置は、電源を入れるとすぐに使用可能で、一般的な熱カシメ機のようにヒーターの温度上昇を待つ必要がありません。また、サイクル時においても、常温のパンチ(成形具)で樹脂を固定するので、短時間での成形部冷却が可能になり、熱カシメ等に比較してサイクルタイムを短縮することができます。
ボスにストレスをかけずに加熱・軟化させてカシメを行うため、樹脂突起部を均等に加熱する事ができ、高いカシメ強度と安定性を得られます。特に熱カシメ、超音波カシメ工法等と比較した場合、大幅に強度アップを得ることも可能です。
光を集光させて赤外線で樹脂を加熱するため、加熱中の赤外線カシメプローブ部を触っても熱くないので、火傷や発火の危険性がありません。
赤外線カシメで使用するコントローラーは、1台で最大24ヶ所までカシメポイントを個別制御することが可能です。それぞれの赤外線カシメプローブを個別に制御できるため、ボスの径や材質が異なっていても同時に加工を行う事ができます。
赤外線カシメプローブ内部は冷却エアによる加圧状態とされており、樹脂溶融時のガス拡散、カシメ部への異物混入を防ぐ構造となっています。また、非接触状態でボスを加熱軟化させるため、樹脂粉の飛散や糸引きの発生が無く、ワークも装置も清潔に保つことができます。
赤外線カシメ | 超音波カシメ | 熱カシメ | |
熱のダメージ | ◎ | ◎ |
× (熱源がある) |
---|---|---|---|
衝撃によるダメージ | ◎ |
× (振動を与える) |
◎ |
意匠面へのダメージ | ◎ |
× (振動を与える) |
△ (熱によるヒケ) |
対応可能な製品の限定 |
× (色に左右される) |
〇 | ◎ |
ボスの変形 | ◎ |
× (加圧による座屈) |
〇 |
カシメ部の外観状態 | ◎ |
△ (樹脂粉飛散) |
〇 |
装置起動時間 | ◎ | ◎ |
× (ヒーター加熱時間) |
サイクルタイム | △ | ◎ | × (長い冷却時間) |
消費電力 (カシメサイクル時) |
〇 | 〇 |
× (ヒータ消費電力大) |
消費電力 (待機中) |
◎ | ◎ |
× (ヒータ温度維持) |
消費エア | △ | 〇 |
× (冷却エア消費大) |
安全性 | ◎ |
△ (発振中のホーン) |
× (火傷、発火、発煙) |
装置コスト (カシメ点数=1カ所の時) |
× (コントローラが高価) |
△ | ◎ |
装置コスト (20点同時カシメの場合) |
〇 (コントローラ1台で24ケ所対応) |
× (振動子と発振器は原則1:1) |
〇 |
保守部品のコスト |
◎ (ランプのみ) |
× (ホーン、振動子が高価) |
△ |
赤外線カシメに適したアプリケーションの一例を示します。
標準的な赤外線カシメ装置の一例を示します。