赤外線を使用した異種材料の接合技術

樹脂と異種材料を接合する技術として、赤外線カシメを紹介します。

樹脂と異種材料(特に樹脂と容易に溶融しない材料)の接合方法の一つとして
熱可塑性樹脂の一部を熱により変形させ、基板・ガラス・金属・樹脂等と固定させる
樹脂カシメがあります。
樹脂カシメの工法は、直接的な接触熱で加熱したり、摩擦熱により加熱する方法が
一般的です。
赤外線カシメ技術とは、赤外線エネルギーを集光させて非接触で樹脂ボスのカシメを
行う技術です。
赤外線を発生する熱源によって樹脂を加熱、溶融させるものではなく、赤外線エネルギー
を集光させることによって溶融する樹脂部分のみを均一・効率的に加熱するのが特徴です。

従来工法では問題となっていた、熱や振動による製品のダメージの解消、ランニングコスト
の削減、仕上がり強度とカシメの安定性の改善を実現させる事が可能です。
赤外線カシメ装置は、今後さらに多種多様な産業用樹脂カシメ製品のニーズに応え、
様々な分野に普及していくことが期待できます。

赤外線カシメのメリット

①ワークへのダメージが極めて少ない
 ボス箇所のみが局部的に加熱されるので、製品に与える熱のダメージがほとんどあり
 ません。
 また、超音波カシメのように振動も無いので、実装基板等の衝撃に弱い他の部品の
 損傷や、意匠面側への傷、ダメージの心配がいりません。

②ガラスフィラー含有樹脂に対応
 樹脂に含有するガラス・フィラー等の含有率が高いものでも対応が可能です。

③ランニングコストが低い
 赤外線カシメは樹脂のボスを加熱して軟化、リベット形状への成形を行う為、製品の
 固定に他の部品や接着剤等を必要としません。
 赤外線カシメプローブ1本あたりの消費電力は赤外線照射中の100Wのみなので、
 他工法と比較して、消費電力を抑えることができます。

④サイクルタイムが短い
 赤外線カシメ装置は、電源を入れるとすぐに使用可能で、一般的な熱カシメ機のよう
 にヒーターの温度上昇を待つ必要がありません。
 また、サイクル時においても、常温のパンチ(成形具)で樹脂を固定するので、
 短時間での成形部冷却が可能になり、熱カシメ等に比較してサイクルタイムを短縮
 することができます。

⑤高いカシメ強度と安定性を実現
 ボスにストレスをかけずに加熱・軟化させてカシメを行うため、樹脂突起部を均等に
 加熱する事ができ、高いカシメ強度と安定性を得られます。
 特に熱カシメ、超音波カシメ工法等と比較した場合、大幅に強度アップを得ることも
 可能です。

赤外線カシメのメカニズム

⑥高い安全性
 光を集光させて赤外線で樹脂を加熱するため、加熱中の赤外線カシメプローブ部を触っ
 ても熱くないので、火傷や発火の危険性がありません。

⑦多点同時カシメに有効
 赤外線カシメで使用するコントローラーは、1台で最大24ヶ所までカシメポイント
 を個別制御することが可能です。それぞれの赤外線カシメプローブを個別に制御
 できるため、ボスの径や材質が異なっていても同時に加工を行う事ができます。

⑧清潔な作業環境
 赤外線カシメプローブ内部は冷却エアによる加圧状態とされており、樹脂溶融時の
 ガス拡散、カシメ部への異物混入を防ぐ構造となっています。
 また、非接触状態でボスを加熱軟化させるため、樹脂粉の飛散や糸引きの発生が無く、 
 ワークも装置も清潔に保つことができます。

赤外線カシメと他工法との比較

  赤外線カシメ 超音波カシメ  熱カシメ 
熱のダメージ

×

(熱源がある)

衝撃によるダメージ

×

(振動を与える)

意匠面へのダメージ

×

(振動を与える)

(熱によるヒケ)

対応可能な製品の限定

×

(色に左右
される)

ボスの変形

×

(加圧による座屈)

カシメ部の外観状態

(樹脂粉飛散)

装置起動時間

×

(ヒーター加熱時間)

サイクルタイム ×
(長い冷却時間)
消費電力(カシメサイクル時)  〇  〇

 ×

(ヒータ消費電力大)

消費電力(待機中)  ◎  ◎

 ×

(ヒータ温度維持)

消費エア  △  〇

 ×

(冷却エア消費大)

安全性  ◎

 △

(発振中のホーン)

 ×

(火傷、発火、
発煙)

装置コスト(カシメ点数=1カ所の時)

 ×

(コントローラが
高価)

 △  ◎
装置コスト(20点同時カシメの場合)

 〇

(コントローラ1台
で24ケ所
対応)

 ×

(振動子と発振器
は原則1:1)

 〇
保守部品のコスト

 ◎

(ランプのみ)

 ×

(ホーン、振動子が
高価)

 △

 

赤外線によるカシメサイクル

①ワークをクランプします。
 赤外線カシメ機では赤外線カシメプローブの先端部でワークを押さえつける機構
 のため、別途クランプ機構を設ける必要はありません。
②非接触加熱により、ボスを加熱します。
 ワークをクランプした後、ツール内部のランプから赤外線を照射します。
 赤外線を集光し、赤外線カシメプローブ内部に収めたワークボスの側面に照射して、
 ボスを加熱、軟化させます。
 集光された赤外線は、ボスのみに集中されるよう設計されていますので、他の部分
 の温度上昇がありません。
 ボスは非接触状態で加熱されますが、同時にボス部をエアで冷却をしながら加熱して
 いくので、樹脂の一部が極端に加熱されることを防ぎ、ボス全体が均等に加熱される
 状態になります。
③樹脂が軟化したら赤外線を停止して常温のパンチによりカシメを行います。
 ボス加熱後、赤外線カシメプローブ内部のパンチ(成形具)が下降し、ボスを押さ
 えてカシメます。カシメ中もエアでパンチごと冷却を行います。
 カシメ後、パンチを上昇させます。
 非接触で加熱を行い、パンチ部は独立して常温状態のため、短時間でのカシメ・冷却
 が可能となるので、樹脂の糸引きの発生が無く、サイクルタイムも短縮させることが
 できます。
④エア冷却しながら固定します。
 十分にボスが冷却された後に、赤外線カシメプローブ全体が上昇し、カシメサイクル
 は終了します。
カシメサイクル2

赤外線カシメの注意点

①吸光性・色等の制限
 赤外線を照射して樹脂を加熱する際、重要なのは赤外線エネルギーの吸光性です。
 黒っぽい色の場合は吸光性が高く、短時間での加熱が可能ですが、同じ材質でも
 白っぽい色の場合には長い加熱時間が必要になります。
 また、光を透過してしまう透明なものや、光を反射してしまうメッキ品は赤外線
 カシメには不向きです。

②材質に関して
 熱可塑性樹脂であれば対応可能です。ただし部材の色によって条件が左右され、透明
 なものには対応できません。

③ボス形状に関して
 基本は円柱形状となります。ボス径が5mm以上になるような場合には中空ポスト形状
 にしますが、ボスの高さは基本的に5mm以下とした方が好ましいです。
 マウント形状は、ダブルマウント形状の方が強度が出ます。
ボス形状

④ボスを通す穴に関して
 穴とボスとの隙間は極力小さくするように設計し、極力ボス径×1.25以内となる
 ようにします。

 

 ボス配置について

  • 赤外線カシメ用の赤外線カシメプローブのサイズは4種類あります。
  • 例として、一番小さいタイプの場合、径がφ20mmなので、各ボスの中心間のピッチ
    は21mm以上にします。
  • 壁などの障害物は、ボスの中心から10mm以上離れるように設計します。
  • これらの条件は標準の赤外線カシメプローブを使用するための推奨条件です。
    製品の仕様上、推奨条件をクリアできない場合には、次のような方法で対応すること
    もできますので、ご相談ください。
    推奨条件がクリアできない場合、事例1のようにプローブを最大15°までの傾斜
    させる、または、事例2のように特殊ツールにて対応させることも可能です。

プローブを傾斜させて対応

専用カスタム特殊ツール

赤外線カシメに適したアプリケーション

赤外線カシメに適したアプリケーションの一例を示します。

アプリケーションの例

装置の構成と主な機能

標準的な赤外線カシメ装置の一例を示します。

  1. ワークを治具にセットし、サイクル起動スイッチを押下すると、プレスユニットに
    取り付けられたカシメ用ツールユニット全体が下降し、ワークをクランプします。
  2. カシメツールがワークをクランプすると赤外線カシメを開始します。
    各赤外線カシメプローブのカシメ条件は、コントローラーで設定します。
    コントローラーは、各々のカシメポイントに最適な条件を個別制御することが
    可能です。
  3. 全ての赤外線カシメプローブでカシメサイクルが終了すると、ヘッドが上昇して
    元の位置に戻り、全工程が完了します。

標準的な赤外線カシメ装置の一例