赤外線を使用した異種材料の接合技術

樹脂と異種材料(特に樹脂と容易に溶融しない材料)の接合方法の一つとして熱可塑性樹脂の一部を熱により変形させ、基板・ガラス・金属・樹脂等と固定させる樹脂カシメがあげられる。樹脂カシメの工法の中でも直接的な接触熱で加熱したり、摩擦熱により加熱する方法があるが、赤外線カシメ技術とは、赤外線エネルギーを集光させて非接触で樹脂性ボスのカシメを行う技術である。赤外線カシメと言っても赤外線を発生する熱源によって樹脂を加熱、溶融させるものではなく、集光させることによって溶融する樹脂部分のみを均一・効率的に加熱させるというところがこの技術の最大の特徴となる。又、本技術を使用した応用工法も紹介する。

赤外線によるカシメとは?

赤外線によるカシメ工程はワーククランプ→非接触加熱により、ボスを加熱→樹脂が軟化したら赤外線を停止して常温のパンチによりカシメを行う→エア冷却しながら固定するという手順となる。このサイクルは、製品のクランプからヘッドの上昇まででいくつかのステージに分けられる。

  1. クランプ工程: 始めのステージは、赤外線カシメプローブが下降しワークを固定するところから始まる。一般的な他の樹脂カシメ工法では、別にワーククランプ機構が必要となるが、赤外線カシメ機ではツール先端部で上下ワークを押さえつける機構の為、別にクランプ機構を設ける必要は無い。
  2. 赤外線照射工程: ワークをクランプした後、ツール内部のランプから赤外線を照射する。照射した光源は放射状に広がるが、この放射状に広がった光を反射部と集光器内部で集光させ、ツール内部に収めたボスの側面に当てることによってボスを加熱、軟化させる。 この時、集光された光は、ボスのみに集中されるよう設計されており、他の部分においてはほとんど温度上昇が無いのが大きな特徴である。 この事よりカシメを行う周辺に熱に弱い電子部品などが実装されていても、これらの部品に悪影響を与えることなくカシメを行うことが可能になる。ボスは非接触状態で加熱されるが、この際、同時にボス部をエアで冷却をしながら加熱していく。この事により、樹脂の一部が極端に加熱されることを防ぎ、ボス全体が均等に加熱される状態を可能とする。特にナイロンや結晶性樹脂等の場合、局部加熱による樹脂劣化が起こるが、樹脂の劣化が少ない事も重要な特徴である。又、ボス部以外には集光されない為、他の箇所に傷やダメージを与えることもなくカシメを行う事が出来る。
  3. ボスが加熱された後は、プローブ内部のパンチが下降してボスを押さえ、その後パンチが上昇し、エアを吹き付けながら冷却を行い、カシメ形状を成形する。他工法では主にパンチを加熱し、樹脂溶融を行うが、本工程では非接触で加熱を行い、パンチ部は独立して常温状態の為、短時間でのカシメ・冷却が可能になり、パンチ部を加熱する工法で見られる樹脂の糸引きも発生し難く、サイクルタイムも短縮させることができると言うメリットがある。
  4. 十分にボスが冷却された後に、ツール全体が上昇し、カシメサイクルは終了する。

赤外線カシメのシーケンス

他工法と比較した場合の赤外線カシメの利点

熱カシメや超音波カシメ、ねじ止め等の他の工法と比較した場合の赤外線カシメの利点として、以下のようなことが挙げられる。

ワークへのダメージが極めて少ない

ボス箇所のみが局部的に加熱されるので、製品に与える熱のダメージがほとんど無い。また超音波によるカシメのように振動も無いので、実装基板等の衝撃に弱い他の部品の損傷や、意匠面側への傷のダメージの心配が無い。

ランニングコストが少ない

赤外線カシメは樹脂のボスを加熱して軟化、リベット形状への成形を行う為、製品の固定に他の部品や接着剤などを必要としない。その為、消耗品が少ないという点でランニングコストを抑えることができる。又、ツール1本あたりの消費電力は赤外線照射中のみ100W必要となり、同じ樹脂カシメでも熱カシメ等と比較した場合に、消費電力を抑えることが可能になり省エネを期待出来る。

サイクルタイム、ダウンタイムが短い

赤外線カシメ装置では、電源を入れるとすぐに使用可能で、熱カシメ機のようにヒーターの温度が上昇するのを待つ必要は無い。またサイクル時においても、常温のパンチで樹脂を固定するので、短時間での冷却が可能になり、熱カシメ等に比較してサイクルタイムの短縮となる。

高いカシメ強度と安定性を実現可能

ボスにストレスをかけずに加熱・軟化させてカシメを行うため、カシメ後の樹脂の状態は安定しており、樹脂突起部を均等に加熱する事ができ、高いカシメ強度を得ることが可能である。特に熱カシメ、超音波カシメ工法等と比較すると大幅に強度アップを得られることもある。メカニズムは下記を参照。

赤外線カシメのメカニズム

高い安全性

光を集光させて樹脂を加熱するので、加熱中のプローブ部を触っても全く熱くなく、火傷や発火の危険性もない安全性が高い工法である。

多点同時カシメに有効

赤外線カシメで使用するコントローラーは、1台で最大24ヶ所までのカシメポイントを個別制御することが可能。この際、それぞれのプローブを個別に制御できる為、ボスの径や材質が異なっていても同時に加工を行う事が可能。

清潔な作業環境を実現

プローブ内部は冷却エアによる加圧状態とされており、樹脂溶融時のガス、カシメ部への異物混入を防ぐ構造となっている。又、非接触状態でボスを加熱し軟化させる為、樹脂粉が飛散するようなことが無く、糸引きの発生も少なく、ワークも装置もきれいに保つことができる。

適正な赤外線カシメとは?

吸光性・色等の制限

赤外線を照射して樹脂を加熱する際において重要となるのは赤外線エネルギーの吸光性であり、樹脂の材質、フィラー、色、透明度、表面処理、形状などの要素が赤外線の吸光性に影響を及ぼし、中でも部材の色は吸光性に大きな影響を及ぼす。その為、黒っぽい色の場合は吸光性が高く、相対的に短時間での加熱が可能だが、同じ材質でも白っぽい色の場合には長い加熱時間が必要となる。また光を透過してしまう透明なものや、光を反射してしまうメッキ品は赤外線カシメには不向きとなり、マスキング等の処理が必要となる。

材質に関して

部材の色等による制限はあるが、熱可塑性樹脂であれば対応可能。又、赤外線使用のメリットの一つとして、樹脂に含有するガラス・フィラー等の含有率が高いものでも対応が可能な事があげられる。

ボス形状に関して

基本は円柱形状となるが、ボス径が5mm以上になるような場合には中空ポスト形状にする方が好ましい。またボスの高さも基本的に5mm以下とした方が好ましい。マウント形状はダブルマウント型の方が強度を出しやすい。

ボスを通す穴に関して

穴とボスとの隙間は極力小さくするように設計し、極力ボス径×1.25以内になるようにする。ボスと穴との隙間が大きいと、溶融した樹脂が隙間に流れ込み、カシメに費やされる樹脂量が少なくなってしまい、結果としてカシメ強度の低下の要因となる。

ボス形状

ボスの配置について

赤外線カシメ用のツールのサイズは4種類あるが、一番小さいタイプで外径がφ20mmである。その為、各ボスの中心間のピッチは21mm以上にする必要がある。また壁などの障害物もボスの中心から10mm以上離れるように設計する必要がある。これらの条件は標準のツールを使用するための推奨条件で、上記制限がある場合には、それ以下のピッチの場合にはプローブを最大15°までの傾斜させて(下写真参考)、対応させるか、特殊ツール(下写真参照)にて対応する。

プローブを傾斜させて対応

専用カスタム特殊ツール

赤外線カシメに適したアプリケーション

赤外線カシメに適したアプリケーションは様々であるが、以下はその一例である。

アプリケーションの例

装置の構成と主な機能

下記の写真は標準的な赤外線カシメ装置の一例。

標準的な赤外線カシメ装置の一例

  1. ワークを治具にセットし、サイクル起動スイッチを押すと、プレスユニットに取り付けられたカシメ用ツールユニット全体が下降し、ワークをクランプ。
  2. カシメツールがワークをクランプすると赤外線カシメが開始。この時、各ツールのカシメ条件は、コントローラーで設定するが、各々のカシメポイントに最適な条件を独立して制御することが可能。
  3. 全てのツールでカシメサイクルが終了すると、ヘッドが上昇し、ヘッドが元の位置に戻り工程完了。

まとめ

異種材料の赤外線カシメについて述べた。赤外線によるカシメにより従来工法では問題でなり得た熱や振動による製品のダメージの解消、ランニングコストの削減、仕上がり強度とカシメの安定性の改善を実現させる事ができる。赤外線カシメ装置は今後さらに多種多様な産業用樹脂カシメ製品のニーズに答え、様々な分野に普及していくものと考えている。