超音波溶着の原理

超音波溶着とは熱可塑性樹脂を微細な超音波振動と加圧力によって瞬時に溶融し、接合する加工技術です。
この接合方法は、成形品の溶着だけでなく、ボスのカシメやスポット溶着、フィルムや不織布のシール、金属のインサートなど幅広い分野において使用されています。
但し、超音波溶着が適用可能なプラスチックは熱可塑性樹脂(熱を加えると溶融する樹脂)に限られ、ウレタンやエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂には適用できません。
ここでは超音波溶着の原理について説明します。

超音波溶着機(超音波ウェルダー)は、電気エネルギーを機械的振動エネルギーに変換し、また同時に加圧をかけることにより2つの熱可塑性樹脂パーツの接合面に強力な摩擦熱を発生させ、樹脂を溶融し結合させます。
これを更に詳しく述べると、まず50/60Hzの電気的信号を発振器(ジェネレーター)によって20kHz(もしくは35kHz)の電気的信号に変換します。
また入力時の電圧は通常AC200~240Vが一般的ですが、発振器内部で1000V近くまで増幅されて振動子へと伝えられます。
Herrmann製超音波発振器では電気回路は通常のリレーを一切使用しておらず、すべてソリッドステートリレーを使用し、かつモジュール化されています。

発振器で増幅された20kHz(または35kHz)の電気信号は発振器から振動子(コンバーター)へ伝達され、そこで機械的振動エネルギーに変換されます。
電気信号を機械的振動エネルギーに変換するピエゾ圧電素子は、交流電圧が供給されると寸法(厚み)が変化し、その変化量は小さいのですが非常に大きな力を持っています。
圧電素子は使用周波数の1/2波長で共振するように、数枚の圧電セラミックがボルト締めされ、そこに交流の電圧が供給されると素子が伸縮運動を起こします。
Herrmann製20kHzの振動子の場合、その出力面の振幅は約16μm(P‐P)となっております。
20kHzの振動子は、文字通り1秒間に2万回の振動を行いますが、その振動エネルギーはホーンと呼ばれる共鳴体を通してパーツに伝達されます。

ホーンがパーツの大きさと同じかそれ以上の場合、パーツ表面での発熱はごくわずかで、ほとんどは溶着されるパーツの境界面へ伝達します。
伝達された振動エネルギーによって境界面では強力な摩擦熱が発生し、樹脂の溶融温度まで瞬時に上昇し、溶着されるのです。
樹脂が溶融し溶着が終了するまでの時間は、樹脂の材質やホーンから境界面までの距離などによって異なりますが、多くの場合は1秒以下で完了します。

前述の説明では振動子からホーンへ振動エネルギーが伝達されると述べましたが、実際にはその間にブースターと呼ばれる機械振幅を変換する部品が装着されるのが一般的です。
これは振動子から発せられる16μm(20kHzの場合)を増減させてホーンに伝えます。
超音波溶着においてパーツにかかるエネルギーを決定する要素には溶着時間・圧力・振幅がありますが、この中の振幅を変えることにより、幅広いアプリケーションに対応することが可能となります。
つまり最適な溶着を行うひとつのファクターは、ホーン端面の振幅の設定なのです。
ホーンは原則として各々のパーツに合わせて加工を行う為、その形状によっては当初から充分な振幅を得られない場合が発生します。
そこでブースターによって振動子から伝わる振幅を増減させてホーンに伝えるのです。

例えば2.0倍のブースターを取り付けた場合、振動子から伝わる16μmの振幅は32μmになってホーンに伝達されるのです。
ブースターの振幅変換は中心(ノーダルポイント)から上部のマスと下部のマスの比を変えることによって得られます。
振幅を増幅させるブースターはノーダルポイントから上部のマスに対して下部のマスが小さく、逆に振幅を減少させるブースターは上部のマスに対して下部のマスが大きくなっています。
上部と下部の比が同じ場合は振幅の増減は行われず、そのままホーンに伝達されます。

他の条件を変えずに振幅を高くすると、その分溶着エネルギーは大きくなります。
例えばある溶着条件で溶着したワークの接合強度が弱い場合に、ブースターを高倍率のものに交換し、他の条件(溶着時間と加圧力)をそのままにして溶着を行うと接合強度が上がることがあります。
これは振幅が高くなったことによって、より大きなエネルギーが発生して溶着強度がアップしたということになります。
しかし高振幅の場合、低振幅に比べてトルクが低くなり、圧力を高くすると振動が停止する「ストール現象」が発生する場合があるので注意しなければなりません。
この「ストール現象」は、自動車でいきなりトップギアで発進しようとするとエンストすることと同じです。
現在の超音波溶着機では発振時の負荷によって振幅値が変動しない定振幅化回路(ロードレギュレーション)が使用されているものもあり、以前よりもストールが発生することは減っていますが、やはり極端な高振幅・高加圧で溶着を行おうとするとエラーが発生することもあります。
そのため、高振幅の場合においては、発振開始時の圧力(トリガーフォース)を低めにして負荷が小さい状態で発振開始を行う必要がある場合もあります。

アプリケーションに合わせて制作したホーンホーンは通常半波長の共鳴体で、その材質は一般的にアルミ合金やチタン合金が使われます。
中でもチタン合金は音響学的性質からも強度的性質からも良いために広く用いられており、ホーンに最も適した材質です。
アルミニウム合金は安価で音響学的性質も良い材質ですが、強度的にチタンよりも低い為に高振幅用のデザインには注意を要します。
またアルミニウム合金は磨耗しやすい為に、硬質クロムメッキを施して磨耗を抑えることもよく行われています。
その他にもスチールが使用されることもありますが、スチールはチタンやアルミよりも硬いために耐磨耗性は優れていますが、高振幅を出すと割れやすい為に、低振幅用ホーンに用いられます。
ホーンの形状は溶着するパーツに応じて決められますが、ホーンにおいてもブースターと同様にノーダルポイントから上と下のマスの比率によって振幅の増減が行われます。
上記の図「スタックと振幅の変化」では振動子から出力された振動がブースターで増幅され、ブースターから出力された振動はホーンで更に増幅されていることを表しています。

このような流れで行われる超音波溶着は以下のような利点をもっている為、幅広い分野で利用されています。

  • サイクルが早い(一般的に溶着時間は1秒以下)
  • コストが安い(接着剤などの消耗材を必要としないためランニングコストが安い)
  • 仕上がりがきれい(表面に塗装処理が施されている物も溶着可能である)
  • 強度が高い(同材質同士の溶着であれば母材強度に近いレベルで溶着できる)
  • 自動化しやすい(自動機への導入が簡単に行えるように設計されています)
  • 高い気密性が得られる(接合面の樹脂が完全に溶融する為、高い気密性が得られます)
  • 消費電力が少ない(超音波発振時以外は待機電力のみ)
  • 再現性が高い(パラメーターは数値管理されており、プログラムの保存も可能)
  • 制御しやすい(各パラメーターはデジタル制御されており、精密な制御も可能)
  • 悪臭が発生しない