超音波のパイオニア 日本アレックス

イメージキャラクター NEO君

技術情報

インサート

1.原理

インサートする金具の外周部にアヤ目のローレット加工を行い、樹脂側にはインサート金具の外径よりφ0.4~1.0mm程度小さい径の穴を設けておきます。インサート金具を樹脂の穴上にセットし、金具上面から超音波振動と圧力を加えると、金具と樹脂の境界面に局部的な摩擦熱が発生し、樹脂を溶融しながら金属が挿入されていきます。
この時、ローレット加工された金属の溝部に樹脂が流れ込み、その後樹脂が再凝固すると金属はロックされ、インサートが完了します。

2.利点

  1. インサート時間が短い(通常は1.0秒以下)
  2. 複数のインサートが一度に行える
  3. 樹脂に割れやひびが発生しにくい
  4. インサート金具周囲の樹脂に対するストレス(残留応力)が少ない
  5. 再現性が高く、制御しやすい
  6. 自動化しやすい
  7. 金型にインサート金具をセットする必要がない
  8. 金型を製作する際、インサート成形用の金型に比べて安価にできる
  9. 成形サイクルが早い

3.設計

(1) ローレットタイプ

図1は超音波インサートにおけるローレットタイプの標準的設計寸法を表しています。
樹脂の内径“D”に対し、インサート金具の外径はD+0.4~D+1.0程度にします。 インサート金具の外周部にはピッチ0.8~1.6程度のローレット加工を施します。 インサート金具の外径が樹脂内径よりも大きい為、位置決め用として金具の下部に高さ1.0~2.0mm程度のφDの突起を設けます。

(2) アンダーカットタイプ

図2は上記のローレットタイプの応用で、アンダーカットタイプと呼ばれる方式を表しています。 アンダーカットタイプはローレットタイプよりも固定強度を更に強くした形状です。
インサート金具はローレット部の下まで樹脂穴にセットし、超音波発振によってローレット周辺の樹脂を溶融します。 溶融された樹脂はローレット部の溝に流れ込み、一部は下方へ流れ出してアンダーカット部の溝を埋め込みます。 アンダーカット部はローレットの溝よりも更に深い溝となっていますので、樹脂が再凝固した後には、より強力なロック機構となり、引張強度を上げることができます。

(3) ウルトラサートタイプ

図3はウルトラサートと呼ばれるテーパーが付いた超音波インサート用の金具を使用した例です。
竹の子形状のインサート金具を使用することによって、溶融された樹脂を更に絡み込ませることができ、クサビ形状になったb部でのロックによって引張強度を高くし、a部によって回転トルクに対しての強度を上げています。

ウルトラサートタイプには以下のような利点が挙げられます。

強度が高い ローレットの場合、溶融した樹脂が溝に流れ込みにくい為に強度がばらつくが、ウルトラサーとの場合は段付テーパー部が大きい為、樹脂が流れ込みやすく、高い強度を得ることができます。 また溝が大きい分、回転トルク強度も高くなっています。
金具セットが容易 インサート金具及び樹脂穴がテーパーになっている為、インサート時に位置が出しやすくなっています。
インサート時間が短い インサート金具表面は、それぞれの段差部で樹脂を発熱させ、効率の良い溶融状態が得られます。
接触面が強い 接触面が強いことから、短時間でインサートが行え、安定した強度を得ることができます。
樹脂のはみ出しが少ない インサート金具及び樹脂穴がテーパーであるため、溶融した樹脂が下方へ押し出されることが少なく、スムーズにロックが行えます。

4.注意点

  1. 超音波発振は可能な限り短い方が良い。
  2. インサート金具と樹脂穴径の重なる量は、可能な限り小さくする。
  3. ノイズレベルとホーン過熱を減少させるため、ホーン外径はインサート金具外径の5倍程度が望ましい。
  4. ホーン形状は衝撃や負荷に強い形状にする。材質は耐磨耗性を考慮してスチール材を使用するのが望ましい。
  5. 超音波の発振開始は、ホーンがワークに当たる前から発振を行うプレトリガーを使用するのが望ましい。
  6. ホーン下降速度はなるべく遅くし、インサート金具を加圧力だけによる圧入状態になるのを防ぐ。
  7. ノイズが大きい場合は、樹脂側からホーンを当ててインサートさせる方法もある。